私が通うこの学校は、この辺りでは一つしかない共学校なので、生徒数はそれなりに多い。
また、唯一の普通科の学校であることも、生徒を集める一因になっているのだろう。他にあるのが農業、工業校ばかりでは、まぁ当然だと言える。
それ故、この学校への進学の理由が「なんとなく近いから」だったりするのは、わりとありがちだったりするのだ。
「だから、勉強とか頑張らなくてもいいじゃない?」
もっと言えば、授業中の居眠りも見逃してくれていいんじゃない?
「よくもまぁ起きたまま寝言が言えるもんだな。それともまだ寝ぼけてるのか?」
あら先生、そんなに怒ったらいい男が台無しですぜ。
大きく振りぬかれた世界史の教科書が、私の脳天直撃○○サターン。
うぃ、目が覚めたので二発目はご勘弁。
黒板に書かれた三角貿易の図を写し始めたのに満足したのか、先生は授業に戻っていった。
はぁ、貴重な睡眠時間が……。
「余裕ね、結衣」
昼休みになって、雅が弁当を片手に私のもとを訪れた。私も、家から持ってきた菓子パンを取り出す。
雅とは高校に入ってから三年間同じクラスになっている。腐れ縁って凄い。
雅が言っているのは、先程の授業のやりとりのことだろう。
さて、特に特徴のないこの学校は、特徴がないからこそ、進学を希望する生徒の数が多い。
それに比例するように、先生の授業に対する熱も、この頃から高くなってくる。
そして雅も進学を希望する生徒の一人だというわけだ。
「まぁ、私には関係のないことだからねー」
そう、私にとって、普通の受験は関係ない。
「だったら、朝練にもちゃんと来なさいよ」
「そ、それはわかってるんだけど、やっぱり朝は、ねぇ……」
呆れ顔の雅に、曖昧に笑いながら答える。
そんな私を見ながら、更に呆れの色を強くし、深い溜息をつきながら、一言。
「夏で、全部決まっちゃうんでしょ?」
どうでもいいけど、箸で人を指すのは大変お行儀悪いと思います。