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2024/04/25 13:18 |
無題

現在時刻は7時ぴったり。

この時期にもなると、この時間にはすっかり太陽も昇り、二月ほど前では考えられないほど過ごしやすい気候になっている。

それでも、やはり人影はまばらで、いるのは犬を連れて散歩をしている人か、足早に歩いていくサラリーマン、それと、私のような部活のある学生くらいのものだ。

勢いよく自転車を漕ぎ、ひたすらに学校を目指す。人通りも少ないから、スピードを多少出しても安心だ。

部活がない日はゆっくりと電車に乗って登校するのだが、いかんせん朝に弱い私は、春先はこうして必死に自転車を漕ぐことが恒例となっていた。

そもそも、ここが田舎だからいけないのだ。

電車を一本逃すと、次に来るのが30分後。駅から学校まで歩く時間を考えると、場合によっては自転車のほうが速いのだ。だからこそ、今もヒーヒー言いながら進んでいるわけなのだが。

私は自分で言うのもなんだが、結構ゆるい性格だ。

こうして普通に寝坊もするし、宿題なんかもしょっちゅう忘れる。たまに電車も乗り過ごす。

だから、本当は部活ものんびりとやりたいところなのだが、そうはできない理由があるのだ。

学校近くの公園を曲がる。これで、あとは学校まで一直線なのだが……。

「やっぱりいるのね……」

ここから見える校門。そこには、ジャージ姿の女子生徒が一人、仁王立ちで待ち構えていた。

私が女子生徒を確認したのと同時、女子生徒も私を確認したのか、表情がみるみる変わっていく。……言及はすまい。本人の名誉のためにも。

ただ、一言言わせてもらえるなら……絶対に今のあんたには近づきたくない。

自転車を漕ぐ足に力を込める。目的はひとつ。

――捕まる前に通過してやる!

加速した私の意図を正確に察知したのか、それともあらかじめ予測していたのか、女子生徒は校門に走り寄り……

「うそっ!?」

門を閉め始めた。

慌てて急ブレーキをかけ、門への衝突を避ける。

ギャギ、という何ともいえない金属音を立て、自転車はギリギリのところで止まってくれた。ふぅ、危ないところだった。

「おはよう、結衣」

訂正。今も危ないところ真っ最中ナウです。

顔はにこやかなのに、全然笑ってるように見えないのは一体どういったトリックなんですかね?そこまで口の端が吊りあがったら唇裂けるんじゃない?

あぁ、誰か助けて。

「お、おはようございます、雅様」

思いっきり動揺した声で、女子生徒――雅に挨拶を返す。

雅こと片山雅は、我らが陸上部の部長であり……

「副部長ともなると、こんな重役出勤が許されるようになるのね?」

私、広瀬結衣は、陸上部副部長という肩書きを持っていたりするわけだ。

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2008/03/17 22:25 | Comments(0) | TrackBack() | SS

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