それを何度か繰り返し、身体にエンジンがかかったのを確認すると、私はスターティングブロックに足をかけた。
グッと足を押し付け、感触を確かめ、地面に指をつく。
あとは、ヨーイドンで走りだすだけだ。
目を閉じて、周りの空気を感じ取る。
この、走り出す直前の、緊張と興奮が入り混じったようなテンションが、とても好きだ。
だんだんと神経が研ぎ澄まされるのがわかる。
さっきまで聞こえていたはずの野球部のノック音も、吹奏楽部の練習音も聞こえない。
聞こえてくるのは、風の音と、自分の鼓動の音だけ。
目を開く。
見据えるのは、ゴールの先、ただ一点。
「用意」
腰を高く上げ、スタートの構えを取る。
大きく息を吸い込み、とめる。
よし、いこう。
笛の音が聞こえるのと、私が勢いよく飛び出していくのは、ほとんど同時だった。
「はー、やっぱり広瀬先輩って凄いですね」
記録をとっていた1年生が、自身の持つストップウォッチを見て、感嘆の溜息を漏らす。
そこには、一緒に走っていた3年生と1,5秒ほども開きがあるタイムがはじき出されていた。
「ほんと、何でこの高校に来たんだろうね。中学の頃から凄かったらしいから、推薦でもっといいところにいけたはずなのに」
記録表に記入していたもう一人も同意する。
実を言うと、この高校では、あまり部活は盛んではない。
こういうと語弊が生じるかもしれないが、原因は単純明快。中途半端に田舎だからだ。
住宅地の真ん中に位置するこの高校は、とにかく土地がない。グラウンドも全体でひとつだけだ。
ひとつのグラウンドで野球部、サッカー部、ハンドボール部、ソフトボール部、そして陸上部が一度に活動できるはずもなく、どこかがグラウンドを使わない練習をしたりして、ローテーションでグラウンドを使いまわしているのだ。
また、都合よくそれぞれの部活を指導できる教師がおらず、名前だけ貸して、練習を見に来ることすら稀なこともある。
陸上部も例に漏れず、進入部員の数を確認しに来たきり、顧問は顔を出していない。そのせいか、男子部は半分ほど帰宅部と化している。
それでも部員のモチベーションが下がらないのは、ひとえに結衣の存在があるからだろう。
独力でとんでもないタイムをたたき出す結衣は、新入生たちの憧れの的なのだ。……朝の壊滅的な様子をみるまでは。
「二本目始めるわよ!計測大丈夫!?」
「は、はい!」
「大丈夫です!」
雅の声に、二人は大きく返事を返す。
いつか、ああなりたい。
そう思いながら、二人は再びスタート位置につく結衣をみるのだった。
ミシャグジ様体力残り1㎝で落とされたあああああああああ
あーもーマジくやしいいいいいいいorz
心折られまくりだぜとっつぁん……
そしてこれくらいしか書くことがないという事実に愕然とするわけですよ。
>ヒレツさん
カテゴリーにSSと登録してるやつが小説になります。全然量はないですけど;
ところで忍者ブログってWEB拍手おけるのかな?
夏にある一番大きな大会といえば、やはりインターハイだろう。
正式名称、全国高等学校総合体育大会陸上競技大会。
……長い。
まぁ、そんなことは置いといて。
要するに、このインターハイで、私が進学できるかが決まることになっているのだ。
自分で言うのもなんだが、私は足が速い。県下では常に何かしらの大会で入賞していた。私が副部長なんてやってるのも、この成績によるものが大きい。
そのおかげで、スカウトの話もちらほら来ていたりして。
で、インターハイで結果を残したら、特待生として迎えてくれるところが出てきたのだ。
色々あって、授業料が免除になる推薦入学でしか大学に入れない私には、頑張らなければならない……はずなのだが。
「別に夜更かしだったり、低血圧だったりするわけじゃないんだから、朝ぐらい一人で起きれるようになりなさいよ」
雅の言うことは、いちいちもっともである。
そりゃ、私だって目覚ましを変えてみたり、早く寝るようにしたり、起きやすいように敢えて寝にくい体勢で寝てみたりと努力はしているのだが、一向に実る様子がない。
「だから、私には雅が必要なわけよ」
「あんたはねぇ……」
「溜息ばっかりつくと、幸せが逃げるわよ」
いや、謝るんで、世界史でやられた場所を狙うのはやめて下さい。
私の抵抗も空しく、キレのいいチョップが見事に脳天に突き刺さったのであった。
「よく考えたら普通の日記も書いていいんだよな」
という結論にたどり着いたので、普通の日記を書きます。
大学が週3で確定です。でも実質週2になりそうです。
資格課程を取っていなかったら、ゼミだけでよかったんですけどねー。
なんで俺は福祉の道に進もうと思ったのだろうか……。
うん、まあ色々あったんだよ。
というわけで、学校に行くのは火、木だけ。
あーこんなんでいいのか大学生ー。
最近はテレビなんて全くつけていないので、ニュースサイトが主な情報源になっているわけなのですが、五輪すごいね。話題提供的には。
早いトコ日本も手を引いたほうがいいと思うんだけどねー。
首相がアレじゃ仕方ないよねー。
選手の記録よりも、経済効果よりも、国交が心配される五輪。
ここまで来ると、逆にどう転んでも「成功」扱いになりそうだよねー、開催国的には。
とかなんとか社会学部的なことも書いてみるのでした。
どうでもいいけど~的って表現使いすぎ。
私が通うこの学校は、この辺りでは一つしかない共学校なので、生徒数はそれなりに多い。
また、唯一の普通科の学校であることも、生徒を集める一因になっているのだろう。他にあるのが農業、工業校ばかりでは、まぁ当然だと言える。
それ故、この学校への進学の理由が「なんとなく近いから」だったりするのは、わりとありがちだったりするのだ。
「だから、勉強とか頑張らなくてもいいじゃない?」
もっと言えば、授業中の居眠りも見逃してくれていいんじゃない?
「よくもまぁ起きたまま寝言が言えるもんだな。それともまだ寝ぼけてるのか?」
あら先生、そんなに怒ったらいい男が台無しですぜ。
大きく振りぬかれた世界史の教科書が、私の脳天直撃○○サターン。
うぃ、目が覚めたので二発目はご勘弁。
黒板に書かれた三角貿易の図を写し始めたのに満足したのか、先生は授業に戻っていった。
はぁ、貴重な睡眠時間が……。
「余裕ね、結衣」
昼休みになって、雅が弁当を片手に私のもとを訪れた。私も、家から持ってきた菓子パンを取り出す。
雅とは高校に入ってから三年間同じクラスになっている。腐れ縁って凄い。
雅が言っているのは、先程の授業のやりとりのことだろう。
さて、特に特徴のないこの学校は、特徴がないからこそ、進学を希望する生徒の数が多い。
それに比例するように、先生の授業に対する熱も、この頃から高くなってくる。
そして雅も進学を希望する生徒の一人だというわけだ。
「まぁ、私には関係のないことだからねー」
そう、私にとって、普通の受験は関係ない。
「だったら、朝練にもちゃんと来なさいよ」
「そ、それはわかってるんだけど、やっぱり朝は、ねぇ……」
呆れ顔の雅に、曖昧に笑いながら答える。
そんな私を見ながら、更に呆れの色を強くし、深い溜息をつきながら、一言。
「夏で、全部決まっちゃうんでしょ?」
どうでもいいけど、箸で人を指すのは大変お行儀悪いと思います。